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いつものように最寄りのバス停からバスに乗ってすぐ、後の座席から声がかかった。
「すみません、フクダ さんでしょ?」
振り向くと70代後半の女性だった。
「・・・あ、違います・・・」
「でも、住宅販売の息子さんでしょ?」
「いや、すいません、違います・・・」
この女性、きっと俺の顔を、どこかで見たことあるはずだと考えていたに違いない。
朝の込んでる時間ということもあって、余裕が無かった。
僕は俳優だから、テレビかなにかで見たことがあって、誰かとお間違えになったんじゃありませんか? と、きちんと言って差し上げるか、もしくは俳優らしくリクエストに応えて、「フクダさん」になりきって、二三言葉を交わすなりするべきだった。
余裕がないと、ユーモアも生まれない。
こういうことではいかん。
俺の母親よりも年上と思しきその女性が、なんでこの人しらばっくれるんだろうという気持ちで俺の後ろ姿を見ていたかもしれない。
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